■ まずこの映画に出演することになったいきさつから教えてください。
花井 私は3歳から21歳まで山崎浩子さんら、コーチの下で、新体操をやって来ていたのですが、怪我をして引退し、1年間ほどリハビリをした後でモデルの仕事を始めたのですが、何かしっくりこないものがあったんです。そもそも私はコーチから、自分で物語を作りながら演じることを教わってきていたんですよ。例えば中学時代の恋愛であるとか、テーマを決めて作文みたいなものを書き、そこからリボンやボールなどを用いてどう表現していくかを考える。そんな風に「新体操のフロアに立つ以上は女優でいろ」というのがコーチ独特の教えでもありましたので、やはりモデルではなく何かお芝居のできる仕事はできないものかと。
■ そこで女優の仕事に興味を持たれたのですね。
花井 はい。新体操時代はそれ以外のことに全く興味がなかったもので、そこから映画をいろいろ見るようにもなりました。そんなとき、街中でいきなり見知らぬ男性から声をかけられまして、「ああ、新手のスカウトか」と最初はシカトしたんですけど、「いや、あなたは女優やったほうがいいよ!」。誰なんだ、この人? と思いつつ(笑)、いろいろ話を聞いていくと、どうも演出の仕事をされている保中良介さんという方で(本作の監督助手のひとり)、「今度オーディションがあるから受けてみないか?」と。それがこの『ジェリー・フィッシュ』だったんです。
■ オーディションのときの様子は?
花井 私が一番だったんですけど、芝居をやったこともなければ、それこそ「用意スタート!」と言われてから演技を始めることすら知らなかったので、最初はかなり呆れられたというか(笑)、でも組む相手を替えながら1時間ほどやっていくうちに急成長が見られたと、後で金子監督から聞かされました。「オーディションのとき、そんなに緊張してなかったでしょう?」とも言われましたけど、でも実は私、あのときは心臓がはみ出しそうなくらい緊張していたんですよ!(笑)
■ 映画の内容などは事前に知った上で受けたのですか。
花井 女の子同士の恋愛映画であることも、裸のシーンがあることも知っていました。でも私、根性と度胸だけで今まで生きてきましたので(笑)。何よりもオーディションを受けている間中、ものすごく芝居が楽しいと感じまして、それこそ新体操の演技とリンクするものがあったんですね。もう一生女優をやっていきたい! そう決心したら、後は一直線(笑)、「裸になるのが何だ!」みたいな気分でもありましたね。
■ 女の子同士の恋愛という点に関しては?
花井 女の子同士って、幼いころでも嫉妬しあったりするんですよ。例えば自分と仲の良い子が他の子とも仲良くなったりするとやきもちを焼くとか、そんな些細なことなんだけど繊細でもあるといったものの延長線上に、この二人の恋愛は位置していると思いました。しかも相手が男性じゃないからこそ、友情を越えて絆が深まっていくという、そんな感情はわからなくもないという女の子って、きっと多いんじゃないかと思います。
■ オーディションに受かって、クランクインを迎えるまでのお気持ちは?
花井 とにかく何も知らなかったので、クランクインまでは本当に不安で緊張していましたが、いざ現場に入ったら不思議と大丈夫でした。
■ クランクインはどのシーンですか。
花井 冒頭の水族館のシーンです。その後の撮影はもう順序がバラバラでしたが、最初だけはそうしていただけたんです。あの日は館内が寒くて緊張も増しちゃって、でもその緊張感がドキドキ感となって画面に出ているのかなとも思います。
■ 夕紀を誘う叶子もまた、実は緊張していたということですね(笑)。
花井 そうですね(笑)。
■ 金子監督とのコミュニケーションはいかがでしたか。
花井 監督からは「思ったことは何でも言ってもいい」と言われたもので、私はわからないこととかあるとすぐに聞くようにしていました。例えば「冒頭でいきなりキスするのは何故ですか?」とか。でも「映画って、リアルじゃないものの中にリアルさがあるんだ」とか「見る人たちそれぞれの主観によって、印象の変わる面白さ」みたいなことを教えていただき、私もその通りだなと感じられるようになりました。また、すごく穏やかで優しい方で、私が演技は初めてということもあって、撮影前に芝居のレッスンに通った方がいいかとお聞きしたときも「一切行かなくていい。レッスン・タイプじゃないから」(笑)。
■ 共演の大谷澪さんとは?
花井 澪ちゃんは役者としてキャリアも長い先輩ですし、私よりも年下だけど、いつも私を引っ張ってくれてもらって、本当に感謝しています。あ、それと、どうも私と一緒に演技していると「え、そう来るの!?」と驚かされることが多かったらしくて、それが楽しいとも言われましたね。だから澪ちゃんからも「瑠美ちゃんは自由だから、そのまま行ったほうがいいよ」と(笑)。
■ そもそも叶子のキャラクターをどう捉えていたのでしょうか。
花井 そのあたりに関しては、特に監督とも話し合ってないですね。もともと私のことをヘンな子だと思われていたようですし(笑)。また「僕が思っている叶子とあなたが思っている叶子の間には、きっと良い意味でのズレがあるはずだから、逆に僕に聞かないほうが面白いものができると思うよ」と。監督ご自身、最初は叶子をもっと淫乱さがあって強気なイメージの子と思われていたそうですが、私は育った環境などがトラウマにもなって、一見強気だけど、実は繊細で弱い面もいっぱいある。ホンを読んだとき、そう感じていました。
■ 撮影最終日は27時間ぶっ通しだったとか。
花井 そうです。よくよく考えるとすごいですよね(笑)。ほとんど叶子の部屋のシーンで、ずっと出っぱなしだったのですが、逆に自分に戻らないで済む分、やりやすかったですね。
■ 最終的にあの二人がどういう結末を迎えるかは見てのお楽しみとして、クライマックスの、その叶子の部屋での夕紀とのやりとりの中、叶子がつぶやく「何でだろう、男とするのはあんなに簡単なのに」は名台詞でした。
花井 あれはアドリブなんです。現場でリハーサルをやっていくうちに、なぜか涙が出てきちゃって、そのうち自然にあの言葉をつぶやいていて、そうしたら監督が「それ、使おう!」と。
■ 生まれて初めての映画出演でアドリブをやれたというのもすごいですね。
花井 すみません!(笑)
■ いや、謝らなくてもいいんですよ(笑)。クランクアップのときはどういった心境でした。
花井 泣いてました。自分がやりきった感もあったんですけど、本当に映画というものが大好きになったんですよ。8月の猛暑の中、スタッフの方々の必死さも目の当たりにして、こういったみなさんの力で1本の作品が生まれるんだなと、クランクアップの瞬間はっきりと確信させられまして、思わずみなさんに「ありがとうございました!」と、泣きながら言っていました。
■ 完成した作品を見たときの感想は?
花井 すごくドキドキでしたね。あんな巨大な画面の中に自分が映っているという事実だけでもう信じられない気持でしたし、とにかく金子監督をはじめ、この映画に携わったみなさんに感謝しています。本当に私は恵まれていたと思いますし、これからもどんどん映画に出たいです。少なくとも今は、もうとにかく映画三昧の日々ですね。監督にも「私、これから大丈夫ですかね?」と漏らしたことがあったんですけど、「大丈夫。僕が女の子を見る目に間違いはないから」って(笑)。