■ 『ジェリー・フィッシュ』のヒロインはオーディションで選抜されていますが、そもそも この作品に出演してみたいと思われた動機などから教えてください。
大谷 もともと私は役者をやっていく上で、裸になるということも通っていくべき道のひとつだと思っていたんです。現に私が好きな役者さんたちの、そういった体当たりの演技も見てきていますし、こういう役をやることで演技の幅が広がるのではないかと。そこで『ジェリー・フィッシュ』のお話を聞かされて、ぜひ挑戦してみたいと思いました。
■ オーディションは、どのような感じで行われたのですか。
大谷 会場には当然女の子たちがいっぱい集まってきていたわけですけど、まさにその選考の場でいろいろな子たちといっぱいキスをさせられました(笑)。何か変な言い方ですけど、要はそこで相性とでも言いますか、この子とは合う合わないみたいなものも不思議と感じられたりして、良い刺激になりましたね。
■ 台本を読まれたときは、夕紀ではなく叶子の役を希望されていたと聞いておりますが。
大谷 と言いますか、どちらかといえば叶子のほうが気持ちはわかるという感じだったんです。いわば夕紀は静なら、叶子は動で、いろいろ行動を起こしていきますよね。私が今までやってきた役も動的なものが多かったもので、それで単純に叶子かなと思ったんですけど、でも夕紀役に決まったと聞かされたときは、今まで演じたことのない、行ってみれば普通の女の子なので、逆にすごく難しく感じましたし、何度も何度も台本を読み返しましたし、“普通”を演じることの難しさも思い知らされましたけど、結果としましてはすごくやりがいがありましたね。
■ 夕紀は叶子に翻弄されっぱなしで、どちらかといえばイライラしていて笑顔も少ない。
大谷 そうなんです(笑)。あまり感情を表に出そうとはしない。
■ 金子監督からは、何か言われたことなどありますか。
大谷 最初の方こそ私が台本を読んで分からない部分とかいろいろ質問させていただいたりもしたんですけど、金子監督は基本的にすごく自由にお芝居させてくださる監督さんで、特に現場に入ると私に任せてもらえたとでもいいますか、そのへんは私としてもすごくやりやすかったですね。例えばクライマックスの二人の絡みの心情であるとか、私も経験したことはないことだらけなので不安はあったんですけど、いざ現場に入って撮影が進んでいくうちに、自然に有紀の気持ちになって考えられるようになっていきました。また、私の質問などに対しても金子監督の答えはいつも適切でわかりやすく、時に楽しい話を交えながら私の緊張をほぐしてくださったり、とてもありがたかったです。私は満島ひかりさんが大好きなのですが、その満島さんが出演された『プライド』を監督された金子さんの作品に出演できるというのも光栄なことだと思いました。
■ 女の子同士の恋愛という内容に関しては、どう捉えていきましたか。
大谷 最初は女性同士という要素が自分の頭の中に特別なものとしてあったんですけど、これもまたやっていくうちに意外と、普通の恋愛と同じだなと感じられるようになったんです。つまり嫉妬であるとか相手のことを想っているうちに辛い気持ちになっていくとか、異性であろうが同性であろうが一緒だなと思えるようになりましたし、そんな特別なことでもないんだなと。実際、出来上がった作品を見たとき、その感情は確信に変わりましたね。おそらくご覧になられる方も、見る前は同性愛の映画という意識でいらっしゃるとは思いますけど、見ていくうちに特別なものでも何でもないこととして、特に女性の方には共感していただけるのではないかと思っています。
■ その意味でも本作は純粋なラブ・ストーリーであり、たまたま相手が同性であったというだけであると。
大谷 はい。そう思います。
■ 叶子役の花井さんとのコンビネーションはいかがだったでしょう。
大谷 はい、オーディションのときから瑠美ちゃんとはキスの相性がすごく良かったです(笑)。撮影に入っても、もう目の前にいる叶子が本当に愛おしいんですよ。それと瑠美ちゃんは演技の経験こそこれが初めてでしたけど、スイッチがオンになったときの独特の雰囲気と言うか、そういったものがすごいなと素直に思えました。また、だからこそ私は信じられたし、信じてもらえる感じもあったし、良い意味でやりにくいところもあればやりやすいところもありました。いずれにしましても、私たちふたりが一緒にいることで醸し出す初々しい化学反応とでもいいますか、それは瑠美ちゃんのおかげだなと思っています。
■ 大谷さんの場合、花井さん以外のキャストとの絡みも多いですね。特にDVDレンタル店での川田広樹(ガレッジセール)さんや奥菜恵さんとの修羅場とか圧巻でした。
大谷 川田さんとは以前一緒のシーンこそなかったんですけど、同じ作品で共演させていただいていて、そのときも現場ではいろいろお話させていただいていたものですから、今回あの店長役が川田さんだとお聞きして、とてもワクワクでした。奥菜恵さんにもドキドキでした。あの方のエネルギーに負けてはいけないと思いつつ、どうしても叶わないという、でもそんな感じが、画面ではあちらは妻でこちらは小娘という関係性として成り立っていたのではないかと思いますね。
■ タイトなスケジュールでの撮影だったと聞いていますが。
大谷 でも芝居に入るときのオンとオフがとても自然に出来ていたように思います。クランクインするまでは不安も大きかったのですが、いざ撮影が始まると本当に自然に夕紀の気持ちになって演じることできていましたし、私が有紀に選ばれた理由もそこでわかりましたし、やはり金子監督ってすごいなあと。監督を信じて夕紀をやれてよかった。
■ クランクアップは叶子の部屋のシーンだったそうですが。
大谷 さすがにそのときはスタッフのみなさんも疲れきっているのに、でも、だからこそものすごい集中力というか、現場の雰囲気は異様なまでに高ぶっていましたし、だからこそこちらも頑張らなければという気持ちに俄然させられました。特に今回の現場は人数が少なく女性が多かったこともあって、みんな家族のように信じあってやっていましたので、今振り返るとすごく素敵な撮影期間でもあったように思いますし、特にあの最終日はみんなで乗り越えた! という感がありますね。
■ 完成した作品をご覧になっての感想は?
大谷 私、いつもだと自分の出た作品って、自分の芝居であるとか演技の癖とかに目がいっちゃって、なかなか集中して見られないんですけど、今回は話が進むにつれて、多分お客さんと同じタイミングで入り込めたとでも言いますか、ものすごく客観的に見ていられました。何だか自分なんだけど自分じゃない、そんな感じで作品を全体的に飲み込めるというのはすごいことだなと。もちろん反省点もありますけど、一方ではすごくこれからの自分に対して自信がつきましたね。また、現場では正直「?」だったところなども、編集されて音楽が入って完成したものを見るとスムーズに理解できたりもして、改めて金子監督やスタッフのみなさんの力量に感服させられました。男性の監督さんが撮ったとは思えないくらい、本当に少女の気持ちが表現されていますよね。でも、女性の監督だともっと生々しい作品になっていたかもしれないし、その意味では金子さんの笑顔や優しさに包まれた作品だなあと思いますね。