2012年の春くらいですか、『ばかもの』で久々に組んだ奥山和由プロデューサーとまた一緒に何かやろうということで、奥山さんのほうから提示されたものの中に、雛倉さりえさんの短編小説『ジェリー・フィッシュ』がありました。執筆時16歳だったという感性の豊かさも含めて非常に面白く読ませていただきましたが、女子高校生ふたりしか登場しない小さく純粋な世界の小説を原作に映画化するとなると、非常に難しいものがある。そこで彼女らを取り巻く家族や友人などの状況を創造し、不純な外の世界とのギャップなどを膨らませていこうということで、『ばかもの』の高橋美幸さんと一緒に脚本を作っていきました。
今回は、僕の出身でもあるにっかつロマンポルノの文法みたいなものが背景として役立っています。僕はかつてロマンポルノで『OL百合族19歳』というレズビアンの映画を撮っているのですが、そのときの若い主人公ふたりと、今回のふたりはどこか関係性が似ているというか、強いように思われていた子が実は弱く、弱い子が意外と強いといった逆転の構図にもなっていますね。ただし一方では、ロマンポルノだと二人の関係が純粋であるといった思想が希薄になってしまう分、今回は新鮮な挑戦でもありました。
全体の構成として、冒頭は水族館のクラゲの水槽から始まり、やがて叶子の部屋という閉鎖的な空間でクライマックスを迎え、ラストは土砂降りの雨で終わる。そこに映画的カタルシスというか、小さな世界を大きく魅せる上での映画を見る快楽をもたらすことができたのではないかと思っています。
主演の大谷澪さんと花井瑠美さんはオーディションで選びましたが、ふたりとも演じている間、お互いをちゃんと愛しているなというものが現場でも十分伝わってきました。また、ここ最近の僕の作品、『百年の時計』でも『生贄のジレンマ』3部作でも、そしてこの『ジェリー・フィッシュ』にしましても、共通しているのは役者さんたちそれぞれがハードなスケジュールの中、演じる瞬間瞬間、ものすごい集中力をもって作品の世界観を純粋に体現してくれていることで、こちらもそれを純粋に映像に収めることができました。本来ならばもっと潤沢な予算と時間があればと悔みつつ、本当にみなさんの頑張りには感謝しています。
この作品では同性愛に対する周囲の偏見も描いていますが、そんなタブーに対する闘いに共感する一方で、禁じられているからこそ甘美であり、そこがドラマとしての深みを増し、面白いのではないかという、そんな側面も感じています。あまりにもオープンだとこういう作品は生まれて来ないだろうし、逆に禁じられていると思った瞬間、悲劇であり大きなドラマが生まれてくる。ですから、これからもいろいろな側面から映画を見据えていきたいと思いますね。